2007年03月08日

Ariel

ariel.jpg

I'll deliver all;
And promise you calm seas, auspicious gales,
And sail so expeditions that shall catch
Your royal fleet far off. My Ariel, chick,
That is thy charge. Then to the elements
Be free, and fare thou well ! - Please you, draw near.

トキカワ星系第三植民星エンドレの月に、人口3万人ほどの小さな港湾都市国家、デューリンゲン公国がある。
そのアンシュルス大公が一人だけ迎えた側室、エリーザとの間にもうけたミランダは、後に正室に生まれた2人の兄弟と同様、逞しく育てられた。
厳しい英才教育と飛び級で、19歳にして船医の免許を持つ彼女は、ほかに、幼少からシュナイダーボート(慣性はしけを運用する為の小型のタグボート)の操船に親しんでいたおかげで、今では、二流以上一流未満の宇宙パイロットとしても、ちょっとばかり名が通っている。

西暦2516年、ヒッパルコス宙域で起こった、米国ロサンゼルス級戦艦ハンプトンローズの縮退炉暴走事故は資源星域を後退させ、国際社会を少々焦臭い世相に至らしめてしまった。その2年後のこと。トキカワ星系の良質な資源秩序の維持を目的に発足した共同軍事条約、フェデリコ条約機構への加盟によって、デューリンゲンは一世紀保った永世中立を破棄する。

時に、公設軍事力を持たないデューリンゲンが、紆余曲折の末、条約に従ってトキカワ連合に出征させたのが、ミランダであった。
彼女の為に、3つのダックスラスターが特徴的なダーウィン型タグシップが進宙する。そして贈り主である父、アンシュルス大公は、ウィリアムシェイクスピア名典をもって、その船に命名をした。

帰路は穏やか、順風に船足は速く、
遙か先をゆく船団に追いつくことは私がお約束しよう。
愛しいエアリエル、これが最後の務めだ。
あとは大気のなかへと、自由に飛びさるがいい!

柵を解かれた女の子の旅は、こうして始まったのである。



本作は、大阪のSFイベント「装甲少女」に出展されたKPGにゲストとしてお誘いいただき仕上げた作品です。かつらぎさん、Kiichiさん、大変ありがとうございました。

posted by mao9821 at 00:00| Comment(0) | ILLUST
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