2014年05月06日

絵を描く人向けの楽ちん印刷法

カラーマネジメントというのは本当に大変である。
画面で認識している色をいざプリントアウトすると絶対に合ってない。
そこで‥

色の話、カラーキャリブレーション
完璧!キャリブレーション

というお話になる。
この、難解だけれどパソコンでというものを扱いたい人が知っておかなくてはいけない酷く難解で難解の難解も難解な話、を、しかし如何にして避けるか、というお話。

unnamed.jpg

(上は、今回の方法で出力したもの。使用している紙は普通紙だが、方向感再現性はかなり高い。色評価用蛍光灯下で、iPod touch 2013内蔵のsRGB準拠のカメラで撮影。Appleの機材は基本的カラーマネジメントが一応成されているため御覧頂いている画像は実際の色、スタート地点の色と方向感は全く同じである。)

131111.jpg

(RGB環境下のオリジナル。作業環境はsRGB。表示環境は今ご覧の環境に準拠。sRGBモニタで見れば、上の写真とこの画像との心理的認知色の違いは殆ど無くなります。一部sRGBからのコンバートができない色はあるけれども。)

結論から言えば、

AdobeRGB対応ディスプレイを買え!
そしてAdobeRGB空間の中で創作をせよ。あとはなんとでもなるから。

確実な結論をいきなり述べてしまったが、正確には、
AdobeRGBカラープロファイルを積極的に使おう!
というお話である。

つまりこういうことだ。

1770215_2039376653_46large.jpg
(出典:
http://www.epson.jp/katsuyou/photo/manabu/kiwameru/theme1/p1.htm
sRGB色空間にカッコ書きで”EPSON基準色”とあるように、本来スタンダードとなるはずのsRGBはハードウェアメーカーの勝手な補正がかかる。写真出力には良いのかもしれないが、イラスト出力には仇となる。)

カラーマネジメントというのは本当に大変である。
画面で認識している色をいざプリントアウトすると絶対に合ってない。CMYKとRGBの違いがどうの、以前に、全く方向性が異なる色を作り上げてくる。これは、プリンタドライバが写真出力向けのアルゴリズムで色調補正するからである。ところが電子制御というものは、本来こういう方向は

ドンピシャ

でできるのが当たり前だ。そしてそうでなくてはならない。
コカ・コーラの赤は世界中どこでも同じ赤である。これは古典的手法で”この赤!(コカコーラーレッド)”というのを完全に定義できているからである。これを応用していくと、みずほ銀行のようなグラデーションが可能になる。みずほ銀行の青は、看板で見ようが紙面でみようが、ネットで見ようが、やはりあの青なのだ。これを色指定という。
デジタルではそれが超絶圧倒的に複雑になるのだが、必ず答えは出るのである。
考えてみて欲しい。自動車のエンジン制御コンピュータは秒間に何十往復もするピストンのすべての工程について完全に把握し、異常燃焼はないか、吸気は正しいか、窒素酸化物は出てないか等々監視し、次の最適点火タイミングを決定している。コンピュータというのは元来そういう芸当ができるのだ。
そんなエンジン制御回路よりも遥かに高性能なパソコンという演算装置と、大変高度なプログラムで正確に制御されているのが、印刷である。
前置きはこのくらいにしよう。

写真出力に対し、絵の印刷出力は特殊だ。それは、

絵というのは、
ベタ塗りになっている面積がデカイ

ことである。
どんな精緻な絵を描いたところで、写真の解像力には及ばない。
その言わば”歯抜け”のようなパターンこそが人間技の特性である。
歯抜けと表現するが、つまりは単一性の色が広大に存在する、ということである。
さらに付け加えて、描き手が創作中にその色を見続けている時間が写真とは比較にならないほど膨大であり、”その色”を誰よりも知っているものである。

ここに先述の写真向け色調補正アルゴリズムが介入すると、その大きな面積を占める特定単一色が一気に変更され、仕上がりの印象は”全く別”のものになってくる。
そして描き手は誰よりもその違和感を感じることになるのだ。


つまり、描いたものをプリントアウトしてみたけれど、画面と全然色が違う、という話だ。これをご経験される方は大変多い。しかし、この問題を頑張って解決されたという方は、今のところお会いしたことがない。
この現象は、RGB色空間とCMYK色空間との違い、という論理では説明されない。が、多くの人はその説明で洗脳されてしまうのである。

これを乗り越える方法はこれまで、所有システムや印刷用紙毎に正確な測色計を用いてカラーキャリブレーションを行い、カラープロファイルを作成し、ファイルに埋め込み、カラー変更し、印刷ドライバにデータを渡す前にPhotoshop側で色空間定義を計算してしまい、そこからプリンタを制御する、という難解な方法が実は最も分かりやすかったw
ご興味ある方は冒頭で紹介したキャリブレーションに関する記事をお読みいただきたい。

しかしそんな難しいことをする必要はない。(笑)

実践に飛ぶ。

・カラーマネジメントの基本、キャリブレーションは全く用いない。
・しかしディスプレイは最低でもsRGBの環境下であること。
AdobeRGB出力制御を持つプリンタを用意すること。
・プリンタメーカー純正の紙を用いること。(但し最高品質用紙ではあまり良い結果は出なかった。あれは専ら写真向けのようである)
・Photoshopからの出力となる。
・絵を描くときの色空間は別に拘らなくていい。
・特に、PainttoolSAIなど、色空間定義を持ってない。(そこから今回のヒントを得た)
・あるいは最初に記した結論のように、AdobeRGB空間で作業するのが最も望ましい。作業環境さえしっかりしてしまえば、あとはなんとかなるのである。が、現時代においては、安価になってきたとはいえAdobeRGBを出せるディスプレイはあまり普及していない。だからそうではない環境を前提に話を進めよう。

・まず、とにかく描く。作業する。それをPhotoshopに読み込む。
・100%Photoshopで作業するのもさして変わらない原理だ。
・そして、

編集→プロファイルの指定で、
1770215_2039375543_204large.jpg

と設定する。その瞬間、画面に映る作品は うっそ、

という感じに鮮やかなモノが映るが気にしないでよい。
これまでRGBの狭い色域で見ていた世界が、AdobeRGBの超絶広大な色空間にはじき飛ばされただけである。(ちなみにPainttoolSAIから上がってきたデータは、一番上の”このドキュメントのカラーマネジメントを行わない”が基本になっている。つまりSAIのデータには、カラープロファイルが存在していない…、OSと描画ハードウェアRAMDAC準拠の素のLab色空間なのである。それでもこの後、見ていた色はCMYK出力できるのである。
余談だが、このsRGBディスプレイ側で、うっそ、という状態のままAdobeRGBを扱えるディスプレイを接続、デュアルモニタ化した状態でそのAdobeRGBモニタへと表示画像を移動させると、あら不思議、良く知ってる色が再現される。)

次に、

1770215_2039387339_47large.jpg

プリンタドライバ側でAdobeRGBを設定してデータを受ければ良い。
これで、専用紙だろうが普通紙だろうが、それに対応するプリンタ側の制御アルゴリズムが基本的にすべてやってくれる。それは、メーカーの研究者が血の滲むようなリサーチの果てに決定していったカラー制御なのである。なにせこのPX-G930というプリンタは、CMYK以外に、R(Red)とB(Blue)というRGB原色を”物理的に”持っていやがるチートのみならず、K(Key Pallete)たる黒インクは2種類も持っており、その印刷制御は可能な限りメーカー任せにするのがベストである。ユーザーが小手先でどうこうできるレベルじゃない。

原理はつまり、

AdobeRGBをTCP/IPのようなプロトコルとして 積極的に 使うのだ。

(絵では、AdobeRGBが得意とする写真ほどの色数は扱っていない。それでもAdobeRGBを積極視するのは、それがどの機種においても貫通的な絶対評価だからである。本来sRGB規格やICM規格がそれを担うことを期待されたのだがsRGBは絶対評価ではなく、特にプリンタ側でメーカー裁量の補正をかけてしまうのである!ICMはMicrosoftの規格。Windowsの細部はなんだかんだで統一的ではないことから、その信憑性に懐疑とならざるをえないまま、普及したという文言を聞いたことがない。
これらを踏まえた上で、これまで書いてきたゴタクへいくのだ。
Photoshopにはそもそも、作業用色空間と出力色空間を別々に定義できるシステムが頑強に備わっているから、キャリブレーションなどを導入しながらそちらを使いこなそうとするものだが、その概念は兎角難解であり慣れがいる。ちょっといじらないとすぐ忘れる。対し今回の方法は、手順が少なく再現性は確実、しかもカラーマネジメントの概念を持たないデータも抱擁可能なのだ。ただし、AdobeRGBを割り当てた時のトンチンカンな表示色は許容しなくてはいけないし、マスターコピーとしてうっかり保存してはいけない。あと、ディスプレイの品質が酷く基本的sRGBすら達していないと、狂いの幅が増えてくることも留意しなくてはいけない。)

そうこうして出来上がるものは、

1770215_2039376552_97large.jpg

普通紙なのに自分が良く知ってる色が出てる世界だ。

普通紙ゆえの表現力の浅さはあるが、色の方向性は画面側のsRGB表示(AdobeRGBプロファイルを充てる前の表示色。私はEIZOのモニタでsRGBを使っている)で心理的に認知している色と、殆ど違わない出力物である。

おしまい

posted by mao9821 at 00:00| Comment(0) | 読み物
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