2016年09月14日

ジェットエンジン

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20世紀のJT8Dと、21世紀のGEnx。いずれもターボファンジェットエンジン。
ジェットエンジンというものが当初期待されていたのはロケットのような噴射反動であって、黎明期のものはその巨大な燃焼室が特徴です。人類はやがて、大量の燃料を燃やすだけではカネがかかるわりに大したこと出来ないことに気づき始めました。
そこで高圧燃焼ガスからさらに動力を抽出して、風車を回すことにしたのがターボファンというわけです。しかも、プロペラ推進のように空間のなかに軸流で存在する回転エネルギーよりも、筒っぽによってエネルギーが変換される能率の良さが20世紀の初頭に発見されていました。ターボジェットの筒型コアの同心円で、そうした原理を実施するのはとても都合が良さそうです。けれどそうしたダクテッドファンを、ジェットタービン駆動の高速回転で実用化するには、大変な冶金の進歩を必要とすることとなりました。強大な遠心力や不慮のバードストライクをなかなか克服できなかったのです。その研究の過酷さは、後に名門ロールスロイスを潰したほどでした。
そこでつなぎとして、比較的低出力のターボジェットをギヤで減速して従来のプロペラを回す、ターボプロップというものが考案されていきました。それはそれで用途を決めるととても能率が良いもので、今ではプロペラ機のエンジンとしては主流となっています。しかし、大量高速輸送の時代はすでにB707やDC8によって開かれていて、より燃費の良い効率的なジェットエンジンが渇望されていくこととなります。そんな過渡期のなかで登場し、B727や初期のB737、DC9といった新世代短距離機に採用されて高い評価を得たのが、JT8Dでした。
そして人類はいろいろとこねくり回すこと1世紀、能率追求の幾何学はいよいよ凄いことになっているのが最新式のターボファンエンジンです。見る角度によって全て表情が違うファンブレードなんか、よくこんなもんに至ったものだと感嘆します。
ここで改めてJT8DとGEnx、その燃焼室の大きさの違いに是非ご注目ください。かつてはロケットのような燃焼室が、燃料を炎と騒音に変換していました。そんな高圧燃焼ジェットは、いまでは最後尾の動力回収タービン群を回すためにつくられています。消音花弁ノズルを備えたJT8Dに対して、タービンだらけのGEnxです。そしてその出力軸を前方に延長して巨大な炭素繊維のダクテッドファンブレードをまわし、強力な推力を作るのです。

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こちらは、ターボファンエンジンの黎明期。ターボジェットコア部分は、可変ステーターという凝ったギミックによって性能を追求し、マッハ2を出す戦闘機用エンジンの傑作、J79です。それをデチューンして商用化したものは、まだファンブレードの能率的制御を確立できていませんでした。こうした技術的特異点というのは繰り返しているもので、前時代はちょうど20世紀初頭タイタニックの頃に存在しています。レシプロ蒸気エンジンを回した蒸気エネルギーの残りカスでタービンを回してみたものの、スクリューに直結していたため動力としては能率が良くなかったわけです。これがやがて減速機構を備えたギヤードタービンとして成立していくのですが、飛行機の場合はなかなか重いギヤを載せられない。何かとギアがあるにはあるのですが、エネルギー出力軸に対してはギヤではなく複数軸と多段のタービンによって能率が追求されるのが主流となっていきます。現代では軽金属の発達によって、ギヤードターボファンエンジンというものも出現しました。三菱のMRJのエンジンがそれです。
さて、絵は、大好きな飛行機のひとつ、シュド・カラベルにCJ805-23が搭載されている写真を見つけてしまって、その後姿に激萌えしたことを言いたかったのです。CJ805-23、-23ですからね、お買い求めになるときはお間違いのなきよう。23が取れるとファンブレードが無くなって、ターボジェットモデルになります。ご注意ください。

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カラベルついでに世界初の”実用”ジェット旅客機として知られるコメットを(”世界初のジェット旅客機”はアブロ・ランカストリアン)。
なんでカラベルでコメットなのかというと、シュド社がカラベルを設計するにあたって、楽できるところは楽しようとした結果、カラベルのお顔はコメットと同じになりました。ということです。なにせ戦後の疲弊期です。極秘裏に英仏合併がフランス側から打診されていたことが後に明るみになって物議を醸しました。でも実際は、カラベルのリアエンジンマウント・プレーンウイングの特許はフランスにかなりの富をもたらすに至ります。ちなみにこのお顔の意匠はコンコルドまで受け継がれます。
対するコメット。レシプロ機時代の設計水準でリベット打ってたら、窓形状の応力分散から負荷かかって金属疲労で空中分解に至るという歴史的事故が起きました。
それを乗り越えたあとでなお、第一世代のゴーストエンジンが採用されたモデルが4機だけながら作られていたんですね。初めて知ったときはゾクゾクきました。COMET-1XB、それは完璧なコメットといっていいでしょう。
巨大な遠心圧縮機と大型のカン型燃焼室に、たった1枚のタービンとステーターで構成した極めて単純なターボジェットエンジンを4基束にして、旅客機が飛んでいたことがとってもとってもツボなのです。

さて。

ここで取り上げている時代の旅客機をぜひ、航空会社シミュレーションゲームにおいて登場を強化していただきたい!!エアマネジメントとか、エアタイクーンとかッ!!!(笑)

posted by mao9821 at 21:20| Comment(2) | SKETCH
この記事へのコメント
凄い図解ありがとうございます。
旅客機のエンジンはエンジン傍の座席に乗った時
うるせーなー、か、静かだなー、くらいの感想しか
持たなかったのですが、一度でいいからコンコルド
を体験してみたかったです。こわいけど。。。
余談ですが、23日のF35式典で登場した和太鼓が
ジェットエンジンの外殻にみえてしまい。。。
Posted by rin at 2016年09月25日 10:27
和太鼓、同感ですw

コンコルド、同じく。デルタ翼の抵抗がゆえに旅客機なのにアフターバーナーを炊く、どんなものだったんでしょうね。
付け加えて、IL62またはVC10に乗ってみたいです。リアマウント4発が機内でどう響くのか、以前から興味津々。
Posted by 真魚 at 2016年09月27日 11:45
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